メディア太郎日記

メディア全般のリアル体験記事

500GRPを取得。テレビスポットの取り方

昨日は久々に「線引き」をしました。

 

「線引き」とは「作案」のことで、テレビスポットを15秒(30秒)ずつ取っていく作業のことです。

 

ある発注に対してCMをどの時間に取得していくか?

さらにその案を代理店に出して(案出し)「もうちょっとこうしてくれ」と変更指示が来た場合、「改案」をするのです。この一連の作業を業界用語で「線引き」と言います。

 

なぜ線引きというのか?

 

今でこそ、どの時間のどこに取得という作業はシステム(PC)で行っているわけですが、PCが無い時代は紙でやり取りしていたわけですね。

 

1週間の番組が全部記載されているものをタイムテーブルと言いますが、そのタイムテーブルにPT(番組内CM)は斜め線、SB(ステブレ。番組と番組の間)は横線で鉛筆で書いていくのです。

だから「線引き」というのですね。

 

ちなみに、タイムテーブルは業界用語では、「巻物」とも言います。

昔のタイムテーブルは縦に長く、外に持って行く時は巻いて持って行ったわけです。だから巻物。

 

さらに、絵柄という言葉があります。

1週間の取得を基本単位として、例えば朝の情報番組にPTを毎日取得し、夜のゴールデン番組を毎日取得し、土日の縦を満遍なく取得する。

そうすると、全体を見渡した時に「コの字」に見えることから、「コの字取り」と言われる絵柄になるのです。

 

他にも、

全日型、ヨの字、コの字、逆L(土日縦と、平日土日ゴールデン)、一の字、ニの字、時には逆Fという取り方もあります。

 

この「線引き作業」。最初は契約を立てて作業が終わるまで2時間くらいかかりました。1ヵ月に何百もの発注が来るわけですから、「こんなんで仕事終わるのかな?」と思うくらい大変でした。

 

半年も経てば、1ヵ月に1万本分の線引きを1人で捌いていたわけですが、契約を立てるにしても

 

時間帯設定

NG番組設定

視聴率号数、個人視聴率設定

GRP(総視聴率)設定

金額、請求設定

代理店、スポンサー設定

過去の案との比較

絵柄、GRP、時間帯(指定時間外に流れると放送事故)の再チェック

代理店伝送

改案

 

という一連の流れはかなりの慣れが必要でした(まあ、将来はほとんどAIでできる気がしますが笑)。

 

この作業に慣れたとしても、ここからテレビの商売の特性が絡む問題が発生するために、「引き算」と「駆け引き」が必要になってきます。

 

このブログでも散々書きましたが、テレビ局は工場の様に商品を増やすことはできないのです。

基本的には15秒を1本として、1ヵ月に2万〜2.2万本分しか保有していません。

(本数を増やすこともできますが、CMを増やしてしまうと、視聴率が下がってしまう)。

1時間に7〜8分ほどしかCMを流せないために、それくらいの在庫になるのです。

 

やれることはただ一つ。一つ一つの商品の価値を高めることでしか、売上を上げていくことはできません。

つまり、視聴率を上げるということです。

 

簡単な例をあげます。

報道ステーションという番組がありますが、報道ステーションが視聴率15%の場合と、半分の7.5%の場合とでは15秒CMを1本取得した時に

 

前者は15GRP

後者は7.5GRP

 

となるのです。前者は1本で後者の2本分を1本で取得できる。本数には限界が決まっているので、視聴率が高い番組があることが、在庫量に繋がります。

 

ほとんどは

GRPグロスレイティングポイント

で発注が来ます。

例えば「500GRP分を取得して下さい」という発注であれば、10%の番組を50本取得すれば到達します。

 

ところが、10%の番組をキレイな「コの字」などで取得してしまうと(業界用語で「バキ案」という)、そのスポンサーの発注は良くても、ほかのスポンサーの発注を邪魔することにもなります。CMの本数には限界があるからです。かと言って、5%の番組を100本取得して案出ししたら、間違い無く「改案」となるでしょう。

 

いくら論理的に500GRP取得しても、全て5%、もしくはそれ以下の番組ばかり取得すると、そりゃ代理店もスポンサーも怒りますよね。

「バキ案」に対して「クソ案」と言われてしまいます笑

 

さらに言うならば、本数を多く流したいというスポンサーもあればできるだけ少ない本数で高視聴率番組に流して欲しいというリクエストもあります。

後者の理由は様々ありますが、面白い事情もあります。

著作権の問題です。

あるアーティストが作った音楽をのせたCMを流す場合、当然アーティストに印税を払わなければなりませんよね。

契約にもよりますが、流れた本数に対していくら払うという事情が発生するために、少ない本数で流したい。

そういう理由もあるのです。

 

全体の発注と視聴率を見ながら、2万本という限界の中で、売上の最大化を図る。

これがテレビスポットデスクの真の役割なのです。